セイレンチュウ..

隠し味には、感情の一振りを。

概要

好きな音楽について書くだけです。

この記事の対象

  • 暇な人



本編

エミリーと15の約束 / majiko

最近好きな曲が色々と増えたのでいっぱい書いていきます。 YouTubeで曲のfullをMVつきで公開するのが最近流行ってますね。そのおかげでTSUTAYAにもあまり行かないし音楽雑誌を購読しているわけでもない僕にも新しい音楽と出会う機会がたくさんあって本当にありがたいです。

さて、最近出会った曲にmajikoさんの「エミリーと15の約束」という曲があります。作詞作曲カンザキイオリさん。
どういう曲かというと、エミリーにお母さんが語りかけるという形式で書かれた歌詞をmajikoさんが力強く叫んでいる歌です。

百聞は一見に如かずと言いますが、今回ばかりは一聞が何にも勝ります。まずは聞いてください。

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歌詞は

よく聞きなさい。
私はこれから遠いところに旅行に行くの。
ちゃんとお土産は買って来るからね?
それまで私と約束して欲しいの、エミリー。

で始まり、15個の生きる上での教訓、母からの教えのようなものをひたすら歌っていきます。
それは「パパにおやすみを言いなさい」のようなシンプルなものから「生きたいときに生きて、死にたいときに死になさい」のような意味深で、強い言葉まで様々です。

もうお気づきでしょうが、お母さんはその言葉通りに遠いところに旅行に行くわけではないでしょう。「大人になったら私を忘れて」のような歌詞からも察せられるように彼女はもうエミリーとは(おそらく永遠に)お別れなのだと思います
それは彼女が死んでしまったのかもしれないし、動画のコメントを漁っていたら「収監された」なんて意見もありました。MVが捕まる前の最後の電話を公衆電話からかけているようにも見えるからでしょう。

何れにせよ、これはお別れの歌なのです。僕はこの曲を聴いたとき思いっきり泣いてしまいました。初めはサジェストで発見して聴いてみただけだったんですけど、2、3回とリピートしたあたりからボロボロと泣いてしまった。

では、なんでこんなに悲しくなってしまったんでしょうか。ここで曲の歌詞とその歌詞に込められた感情について考えてみます。

歌詞には少なからず感情がこもっていると思っています。感情のない、事実だけを述べた歌はほとんどネタ曲でしょう。歌に乗せて何かを暗記したい、とか。

例えばラブソングであれば、「君がこんなところが好きだ」と一生懸命歌ってるわけです。歌詞にストレートな気持ちを乗せた曲が多いです。ある有名恋愛ソングを例に出せば「おいしいパスタ作ったお前にベタ惚れ」して「嬉しくてスキップして」「好きって言いてえ」とか何度も相手のことが好きなんだという描写があります。
これはこれでいいと思います。好きって感情が溢れてる感じがすごくするし。

では、お別れの歌はどうでしょうか。この場合込められる感情は「寂しさ」そして「悲しさ」といったものでしょう。特に「寂しさ」が中心の感情となってくるかと思います。(もちろんいろんな曲があるのであえて一般化するなら、ですが)
このとき、歌詞で「寂しいよ」「お別れしたくないよ」と何度も言うのはどうでしょう。僕は少し品がない気がします。この手の感情は繰り返し描写することでその感情自体より、未練、後悔といった後ろ向きの姿勢の方が強調されてしまう気がしませんか?

つまり、別れの曲は「寂しい」の感情を歌詞からなるべく漏らさないようにするのが大事だと思うのです。涙のしょっぱさは隠し味程度でいいのです。
もう一度「エミリーと15の約束」の歌詞を見てみます。

最後の部分の歌詞

エミリー。
エミリー。会いたい。会いたいよ。
愛してる。愛してる。
愛してる。

にこの曲の全ての感情が込められているように思います。それまでは一切ありません。ただエミリーにひたすら教えを説いているだけです。
最後の最後に何度も繰り返し同じ感情が歌われているのです。隠しきれず、抑えきれず漏れ出た感情なのだということを自然と聴き手側に訴えかけてきます。

だからこの曲はひたすら悲しいのです。相手を心配させまいと本当はつらいのに笑おうとする誰かを見ているときに似た感情を感じます。

あくまで僕個人の意見ではありますが、これも踏まえて最後の部分を是非聴いて欲しいです。きっと良さが増して聞こえます。

雲と幽霊 / ヨルシカ

さて、お別れの曲についてここまで書いてきました。
お別れの曲といえば、もう一つ思いつくのがヨルシカだと思います(諸説あります)。昔ちょろっと書いたと思いますが、ヨルシカの曲には「別れの寂しさ」の感情が込められがちだと思っています。

今回の話に関連する曲として一つ、今回は「雲と幽霊」について書いていきたいと思います。
何はともあれまずは聴いて欲しいです。

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MVがとても綺麗な曲です(余談ですが、DAMでこの曲を歌うと本家MVが見られます。これは歌うしかない)。
聴いてもらえれば大体わかったかなと思いますが、幽霊になった僕が「君」に会うストーリー性を持った曲です。
これも歌詞を見ていくと途中までは「雲が遠いねえ」とか「夜の雲ってなんであんな高いんだろうねえ」といったなんともお気楽な感じの感情が目立ちます。死んでしまっているのに悲壮感とか全然ないですよね。
でもラスサビの最後に「だからさ、だからさ、君もさ、もういいんだよ」ときます。これがこの曲の主題とも呼べる感情だと思います。

僕を失ってきっと悲しんでいるかもしれない「君」にお別れを言いにきた曲なんです。悲しんでいる「君」の隣で、「君」には見えてないし聞こえていないんだけども、ひたすら「空が高いねえ」とかあえて呑気な言葉で呟きながら最後にポツリと、「君」を気遣いながら「もういいんだよ」と伝える曲なのかな、と僕は思いました (MVとは少しずれますが)。
きっといろんな想いの詰まった「もういいんだよ」なんです。そう考えるとこの曲もまた違った味わいが生まれませんか?

まとめ

今回はこの2曲をピックアップしました。ストレートに感情を伝える曲も僕は好きです。励ます曲とかラブソングとか失恋ソングとか、回りくどく感情を伝えるのは効果的ではありません。こういった曲は伝えたい思いを聴き手に伝えてなんぼの曲です。
しかし、寂しさを伝える曲、しかもこの2曲のように架空世界を想定する曲は、製作者が架空世界に込めた感情は隠してなんぼだと思っています。

感情の伝わる仕組みは普通「製作者→聴き手」のように直接的ですが、今回紹介したような曲は視聴者はあくまで傍観者に徹します。制作サイドが思いを込めて作り上げた架空世界を傍観するのです。そして、傍観の立場からその感情を感じ取れたときに曲の良さが伝わるのだと思います。

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この記事を読んで僕と同じようにこれらの曲を好きになってくれる人が一人でもいたら嬉しいです。
また時間のあるときに好きな曲を紹介する記事を書いていこうと思います。それでは!