感情表現系アーティストのすすめ
概要
自分の好きな歌い方について語ります。
この記事の対象
- 感情を込めた歌い方が好きな人
本編
こんにちは。alumiです。
久々の音楽布教記事です。
ということで、今日は自分の好きなアーティストさんたちを「感情表現系アーティスト」としてくくって紹介していこうと思います。
感情表現系とは
まず自分なりの「感情表現系」の定義から説明します。
言ってしまえば、わざと声を荒げたりがなったり、エッジボイスを多用したり、声を震わせたり、そういったカラオケの点数評価につながらないような表現を多用した歌い方をするアーティストさん、および曲です。
音程のない「語り」のパートが入る歌も今回はこれに含めます。
こういう歌い方をする人は大好きなので、今回の記事で紹介しきれるかわかりません。多くなりそうだったら記事を分けます。
アーティスト
さて、まずは感情表現が豊かな歌い方の曲が多いアーティストを紹介します。
あとで、「普段はそうでもないけどこの曲はそう」みたいなアーティストも曲単位で紹介します。
美波
有名どころをまず持ってきました。
美波さんは女性のソロシンガーの方で、作詞作曲も自分でしています。基本情報はwikiなどを見ればいくらでもわかるので、これくらいにして、早速自分のオススメの曲はまずはこれです。
サビ付近で美波さんの圧倒的かっこよさに触れられます。
この高さの音をかっこよくがなれるのはやはり女性歌手の強みだなあ、なんてこの曲を聴いてると思います。
紹介したい曲が多いのでどんどん紹介します。
これは「語り」がある曲です。めちゃめちゃ高いです。1番サビ最後の「歌ってんだろ」がかっこよすぎて何回でも聞ける曲です。
美波さんはこの2曲以外でも迫力のある歌い方をされているので是非聴いてみてください。
Mrs. Green Apple
言わずと知れたミセスです。
ミセスは「Whoo Whoo Whoo」や「Wanted! Wanted!」のようなフェス向きな音楽を作るかと思いきや、「春愁」や「僕のこと」のように繊細に歌い上げる曲も作れる天才だと思います。
今回の記事で紹介するのは後者です。
卒業がテーマの曲ですね。
ソース不明ですが、ボーカルの大森さんが実際に卒業式の前後で作った曲らしいです。天才か?
「言われてみれば うん、早かった」のように、少しエッジがかった声で歌うことで繊細な表現をしているところが好きです。
あと歌詞も良いですよね。
もう一曲。
これも男性曲なのにたっかいです。これはラスサビ前の
僕らは知っている 奇跡は死んでいる
努力も孤独も 報われないことがある
あたりの、吐息多めのかすれた歌い方が大好きです。
ミセスは全体的にエッジボイス多めな歌い方をしていると思うので、そういうのが好きな人はぜひ他の曲も聴いてみてください!
花譜
VTuberです。なにそれ?って人はググってみて。
中身は普通の人間です。運営さんによるとまだ高校生になったばかりっぽいです。
すごく特徴的な歌い方をされるアーティストさんで、好きな人はすごく好きだと思います。
苦手な人は苦手かも。
基本的に他の人が作った曲をカバーしているのですが一部オリジナル曲もあって、それがまたいいので今回はそっちの方を紹介しようと思います。
この曲はカンザキイオリさんというボカロPさんが作詞作曲されていて、(カンザキイオリさんの曲は今回紹介しているようなアーティストとすごく相性がいいです)とても良い仕上がりになっています。
自分を置いて夢に向かって旅立った誰かを想う歌です。
雛鳥である自分もいつか巣立って、私を置いていったあなたより高く飛んで、「バカ」って一言言ってそれで終わりにしよう、という歌詞が刺さります。
花譜さんは常に声が不安定な感じなのに違和感があるわけでもなくて、不思議な歌い方だと思います。あと声がめっちゃ透き通ってます。
合う曲はドンピシャで合います。たくさんカバーをあげているので、知っている曲があればぜひ花譜バージョンも聴いてみてください。
ヨルシカ
僕の大好きなヨルシカも、昔はそれほどでもなかったですが、最近の曲では割と感情を込めて歌っている節があります。
例えば「だから僕は音楽を辞めた」。
このラスサビ前の「間違ってないだろ 間違ってないよな 間違ってないよな」は全て歌い方が変わっていて表現に富んでいると思います。
あとはyoutubeには上がっていないですが、「神様のダンス」や「憂一乗」なども感情が伝わってきてオススメです。
水槽
ここまで紹介してきた人たちに比べると知名度は下がりますが、今回の記事を書くにあたって個人的にこの人は欠かせません。
水槽さんの表現力や自分の世界を持って歌っている感じは、多くの歌い手さんの中でも群を抜いてすごいと思います。
歌い手の方なので基本的にオリジナル曲は歌っていないので、僕の好きなカバーをいくつか紹介します。
ボカロにここまで感情を込めることなんてできるのか…と驚愕した曲です。
原曲がそもそもsasakure.UKさんの人間とボカロをテーマにした曲なのですが、見事なまでに自分の解釈を表現して歌い上げているなと思いました。
これはいよわさんという作曲者もやばいんですが、水槽さんが歌うことでさらにやばくなってます。
多くは説明しないので一度聞いてください。
曲
次は上で紹介したアーティスト以外でいいなと思ったものを、曲単位で紹介していきます。
黒い羊/欅坂46
このグループが普通のアイドルグループと違うところ、それは平手友梨奈さんメンバーにいるところです。この曲はその事実をはっきりと見せつけられます。
PVもメッセージ性の強いものになっているので、ぜひPVと一緒に聞いて欲しいです。
今回の記事の内容に合わせて言えば、2番サビ前の「全部僕のせいだ」のソロパートは平手さん以外歌えるアイドルいないんじゃないか?ってくらい鳥肌が立ちました。
死神/大森靖子
これは一応【閲覧注意】にしときます。
苦手な人にとっては絶対受け付けない歌い方だと思います。
僕もこれを初めて聞いたときはいつ聞くのをやめようか迷いました。
そう思いながら最後まで聞いてしまったわけですが。
生きていたんだよな/あいみょん
これは少し特殊な紹介の仕方をしますね。あいみょんさんは作る曲自体はいくらでも感情がこもりそうなのに割と淡々と歌います。
さらっとかっこよく歌い上げます。
だからあいみょんさんの曲は原曲よりカバーの方が感情的に歌われていたりします。
この曲は語りのある曲です。
自殺した知らない子を想う歌。テーマは黒い羊と少し似てますね。
どのカバーがいいとかはあげないので、ぜひ聴き比べてみてください。
まとめ
はい、いかがでしたか。
こういう歌い方をする人が昔に比べて圧倒的に増えてきたなと思っていて、時代の変化を感じています(と20数年しか生きてない若造が申しております)
今回紹介したような、自分の感情を叫んでいる、訴えているような歌い方が流行っているのは、それだけ現代社会に生きる人たちが悲鳴をあげているということなのかもしれないと思います。
そして、紹介したのはほぼ女性でした。もちろん僕がまだ出会っていないからなのかもしれません。
しかし、このように何かを訴えたり叫んだりする歌い方は男性より女性の方が有利なのかな、と少し思います。
というのも、女性の方が地声が高いので、震え声はともかく、叫び声、がなりに関してはより「素」の表現になるんじゃないかと思うんですよね。
男性が歌で高い声で叫んでも、普段はそんな高い声で叫ぶわけじゃないから違和感が生まれるというか。かといって低い声で叫んでもなんか違いますし。
あとは社会通念(あるいは僕の偏見)で女性の方が感情を表に出すもの、みたいなイメージが若干残っているから女性有利に見えたりするのかもしれませんね。
この記事で僕と同じように感情を込めた歌い方が好きになってくれた人がいたら幸いです!それでは!
ノーチラスを歌いました
概要
ノーチラスについて書いていきます。
この記事の対象
- ヨルシカファン
本編
昨日、半年ぶりに歌ってみたをあげた。
院試勉強で忙しかったので久しぶりの投稿。
ノーチラスはヨルシカの始まりの曲といっても過言ではない。初期の頃からn-bunaさんの中にエルマとエイミーの物語、ヨルシカのコンセプトの構想があったことを踏まえると、この曲は大きな意味を持つ曲だ。
「深い眠りから覚める曲。浮上のメタファー」であるとどこかでn-bunaさんが語っていた。
この曲は、エイミーの後を追うだけだったエルマが自分一人で先へ進んでいくことを決心した曲だ。
ヨルシカの根本にエルマのコンセプトがあるとすれば、この曲はまさにヨルシカの原点の曲と言ってもいい。ヨルシカが好きであればあるほど、この曲は良さを増す。
だから僕も、初めて聴いたときからずっと歌いたいと思っていた。
しばらくして、TZ Sound Worksというyoutubeチャンネル(TZ Sound Works - YouTube)の方がノーチラスの生音instをあげているのを発見した。
聴いてみるととってもクオリティが高く、これでノーチラスが歌えるぞと思うと居ても立ってもいられなくなってすぐに大学の防音室を予約した。
問題はどうやって歌うか。
ヨルシカの楽曲は自分の音域よりやや高く、どうしても一部に裏声が入ってしまう。
裏声と地声の切り替わりが多いと、歌う難易度は上がるし、少し聞き辛い歌になってしまう。そういう経緯もあって前回歌った「だから僕は音楽を辞めた」は-3のキーで歌った。
でも、この曲は原キーで歌いたかった。出来るだけ原曲の世界観を崩さないで歌いたかった。理由がある。
少し話を脱線して、自分がなぜ歌ってみたをあげているかの話を書いていく。
「歌ってみた」という文化の起源はボカロの曲を人間が歌ってみたらどうなるか、という発想だろう。
ボカロには人間にない良さがあり、人間にはボカロにない良さがあるので、どちらかが廃れるということなく今まで二つとも続いてきている。
僕はニコニコ動画でボカロを聴いて、一部のボカロ曲は、作者が人間の感情を描いて作っていて、ボカロはその歌い手を担っているに過ぎないという印象を受けた。
人間感情の代弁者としての役割は、ボカロではなく人間が良さを出せるフィールドだと僕は思う。少なくとも自分はそっちの方が好み。
だから自分の好きな曲をもっと好きになるために自分で歌うことにした。つまり、自分が(人間が)歌ったものをボカロの原曲より「聴きたいから」歌う。
基本的にこういうモチベーションで歌っている。
ひょっとすると、原曲を軽んじているとか言われるかもしれないが、そんなつもりは全くない。
ボカロの方がいいと思っている曲もいっぱいある。
「一部の曲で」「僕は」人間が感情を込めて歌唱したものの方が聴きたい、というだけの話だ。好みの問題とも言える。
そういうわけで、僕の歌ったものを一番気に入ってるのは僕自身だ。そこだけは絶対の自信がある。
話を戻す。
ヨルシカの楽曲については、このモチベーションは全く当てはまらない。
原曲より人間が歌った方が好きだから、聴きたいから歌っていたわけだが、ヨルシカの楽曲はそもそもsuisさんという人間が歌っている。
suisさんの歌い方に不満があるかというとそうではなく、むしろ大好きな歌い方をされている。自分が歌って原曲を超えることはない。
つまり、上位互換の作品を産むために歌っているわけではないということだ。
では、何のために歌うのかというと、「聴きたいから」ではなくて「歌いたいから」。
歌うことで、ヨルシカという世界観に自分も入り込めるから、歌いたいのだ。
だから、僕自身がヨルシカを歌うのであれば、原キーであることに大きな意味がある。
「だから僕は音楽を辞めた」のときも初めはそのために原キーで録音していた。でも、あのときの僕の技術ではどうしても歌いきれなかった。
そういうわけで諦めて-3で歌ったのが前回だった。
今回は「だから僕は音楽を辞めた」に比べて、ギリギリちゃんと歌えそうだったので頑張った。
それぞれどんなことを考えて歌っていたのかを書いていく。
まず1番。
suisさんは全体的にしっとりめに歌っていた。でもMVを見たときに、1番のサビでエルマは涙を流していた。
だから叫ぶことにした。というより、自然と叫んでいた。
僕の中でこのノーチラスという楽曲はMVと一体化して心の中に存在している。だから、MVに合わせた歌い方を自然としてしまっている気がする。
2番は、MVではエイミーの回想シーンだった。
旅をしながら人生の終わり方を考えるエイミーを想う、エルマの視点で歌った。あくまでノーチラスを歌っているのはエルマだから。
AメロBメロは歌詞通りの感情で「何がしたいんだろう」という無力感を想像して歌った。「人間なんてさ、見たくもないけど」は少し心を締め付けられるように。
サビは激しい感情を1番よりは抑えて綺麗めに歌った。「今日を泳いで」のところはもっと強く歌うこともできたが、なるべく優しく歌った。(張らないと出ない音域だったので難しかったが)
Cメロ、「丘の前には君がいて〜」からは二人の想いがシンクロする場面だ。エイミーを追いかけて同じ場所を旅するエルマが、エイミーの気配を確かに感じつつ、でも「さあ、二人で行こう」という言葉には応えられない、そういう悲しさを感じながら歌った。
「笑いながら、顔を寄せて、さあ、二人で行こうって言うんだ」の「二人で行こう」はなるべく優しく歌った。エイミーはきっとそういう風にエルマに語りかけるだろうから。
「夏草が邪魔をする」は森の教会でエイミーの影を茂みに見つけて追いかけるけど、何もできずに見失ってしまったシーンを想像をして歌った。この歌詞はエイミーと一緒に行くことはできない寂しさと儚さを端的に表していると思ったので、できるだけ細い声で歌った。
あと、原曲では深めのリバーブがかかっていたのでMIXも似せた。
ちなみに、「夏草が邪魔をする」はヨルシカの昔のミニアルバムのタイトルだ。
今回動画も自分で作っているけれど、その際、「夏草が邪魔をする」の文字はミニアルバムのときのタイトルの色と同じにした。
また、儚さを表現するために、文字が砂になって消えるようなエフェクトをつけた。
最後はラスサビ。
原曲の「手が触れたらもう」の部分に上ハモが入っていたので同じように入れた。
ラスサビについては、MVでエイミーがノーチラス号に乗っている自分の幻影を見たとき、何を思ってどうして涙を流したのかいまだに自分の中で正解を出せていなかった。だからここだけ、迷ったまま普通の歌い方をした。
歌が終わってからの演奏部分で、動画中にエルマの日記帳からの引用をいくつか載せた。
「それなら君はエルマだよ」や「君の指先には神様が住んでいる」など。初回限定版を買った人にはどのページに書いてあるかわかるだろうフレーズ。
最後の方には「何がしたい?」というエイミーの問いかけへのエルマの「やっとわかった。」という返答を引用した。
日記帳でも最後の数ページにでてくる言葉だ。
この後、エルマは日記を書くのを最後にして、エイミーの遺した詩で曲を作ることを決心する。
ノーチラスはアルバム「エルマ」の最後の曲であり、同時に始まりの曲でもあるので、ノーチラスの最後の演出としてその決意を端的に表す「やっとわかった。」を持ってくるのは自分の中では早くから決めていた。
こんな具合にいろんなことを考えながらこの歌ってみたを作った。
全部自己満足だと思う。
初めから「歌いたいから」この曲を歌った。だから、録音の過程ですでに満足している。
何度も涙を流して、こらえて、自分の歌の技術と真剣に格闘しながら録音していった過程こそが、僕がこの曲を歌うに当たって求めていたものだった。
それでも、やっぱり投稿してしまうのは、この曲とは無関係の僕の承認欲求だろう。
そう白状した上で、よければ一度聴いてみてほしいなと思う。
きっと、技術不足、度量不足でやりたい表現が伝わりきらない部分もあるだろうが、こういう気持ちで作った二次創作だよ、ということはここに全部書いたつもりです。よろしくお願いします。
かくして、ヨルシカは始まった【エルマ感想】
概要
ヨルシカについて考察と感想です。
この記事の対象
- 「だから僕は音楽を辞めた」と「エルマ」のネタバレを気にしない人
本編
アルバム「エルマ」が発売され、一つの物語が完結したので、忘れないうちに記録を残していこうと思います。ちゃんと考察するのでアルバムのネタバレを含みます。
概要
初めに
「だから僕は音楽を辞めた」は一人の青年の音楽との向き合い方を描いたコンセプトアルバムです。初回限定版は木箱にエルマへの手紙と写真とともにアルバムが封入されています。このアルバムには、数々のインタビューでn-bunaさんが語っているように、n-bunaさん自身の思考や音楽論が込められています。
そして「エルマ」はそれに対するアンサーアルバムとなっています。初回限定盤はエルマの日記に写真とともにCDが収められています。
構成
二つのアルバムはついになっています。似たような演奏を散りばめたり、曲のタイトルを似せたりと明らかにこの二つのアルバムの曲同士は関連づけられています。また、曲中の言葉はこの物語を理解する上で重要な役割を果たしています。 「だから僕は音楽を辞めた」の収録曲は以下のようになっています。
- 8/31
- 藍二乗
- 八月、某、月明かり
- 詩書きとコーヒー
- 7/13
- 踊ろうぜ
- 六月は雨上がりの街を書く
- 五月は花緑青の窓辺から
- 夜紛い
- 5/6
- パレード
- エルマ
- 4/10
- だから僕は音楽を辞めた
これに対し「エルマ」は以下のようになっています。
- 車窓
- 憂一乗
- 夕凪、某、花惑い
- 雨とカプチーノ
- 湖の街
- 神様のダンス
- 雨晴るる
- 歩く
- 心に穴が空いた
- 森の教会
- 声
- エイミー
- 海底、月明かり
- ノーチラス
1,5,10,13曲目はサウンドトラックです。
「藍二乗」と「憂一乗」のようにタイトルで関連性がわかるものもあれば、わからないものもあります。
しかし、これらはちゃんと対応しています。
例えば、11曲目の「パレード」と「声」ですが、パレードという曲は体の奥、喉の真下から生まれる誰にも見えない振動にこそ心が宿ると歌った曲です。これはつまり声のことであると、エイミーは手紙で語っています。
このように、同じ曲数目の2曲は同じテーマについてだったり、同じ場所で書いた詩であったりと関連性があります。
物語
2つはコンセプトアルバムであり、1つの物語があります。
エイミーという青年、そしてエルマという女性の物語です。
「だから僕は音楽を辞めた」ではエイミーが自分の音楽への葛藤の答えを得るために旅をして、訪れた先で手紙と詩を書き記してそれを木箱に封入します。
「エルマ」ではそれを受け取ったエルマがエイミーの訪れた場所を同じように訪れます。
もちろん原作小説などはありませんので、二人の行動や思いはエイミーの書いた手紙、エルマの書いた日記、そして二つのアルバムの曲たちから推測することしかできません。
「だから僕は音楽を辞めた」の発売時点ではエイミーの哲学が断片的に感じ取れるだけで、謎が多くありました。「エルマ」はそれらを補完する形で物語を完成へ向かわせるようなアルバムです。
「エルマ」
物語
旅をする
祖母から連絡があったので帰省した。山間は色を変えて、秋も深く暮れた頃だった。家に何か妙なものが届いていると、祖母はそう言っていた。
(中略)包みを破って中から出てきたのは少し薄汚れた、妙な木箱だった。
蓋を開けて、彼の、エイミーの遺した手紙を読む。あの日から私の瞳はずっと夢を見ている。
エイミーの書いた便箋たちが入った木箱がエルマの元に届き彼女の物語は始まります。
ずっと彼の後を追っていただけのエルマにとって、彼が寄越した詩の真の価値を理解することなんてできませんでした。
だから、彼の後をたどる旅に出ることにします。これまでもずっとそうしてきたように。
マルメ、ルンド、リンショーピン、ストックホルム、ガムラスタン、ゴッドランド島ヴィスビー。
彼の旅路を辿ります。
次第にエイミーとの思い出は脳の容量をあふれて消えていきます。日記帳にももう何も書けなくなります。
旅の果て
途方にくれヴィスビーを意味もなくさまよっていたエルマは森の教会を訪れたとき、茂みの先にエイミーの姿を見たような気がしました。
茂みをかき分けて彼を追うと、いつしか海岸沿いの砂浜にある桟橋にたどり着いていました。
「終わりのない小説なんてものは詰まらない」
「人生の価値は終わり方にある」
彼の言葉に最後まで支えられていたことに気づいたエルマは、彼の言葉を胸に人生を終わらせようと桟橋から海に飛び込みます。
桟橋の隙間から漏れ出た日光が月明かりのように海底に届きます。
ふと、ぼやけた視界の隅にエルマは、泥に埋まった万年筆を見つけます。
エイミーが使っていた万年筆です。
桟橋近くを探すと彼の使っていたインクの瓶と彼の鞄がありました。
鞄の中には手帳が。
エルマが旅を綴っているスペアの手帳ではなく、正真正銘彼の使っていた手帳。
エイミーはいつも詩を作るとき、下書きを書いてから手帳に写していました。
エルマに送られてきたあの便箋たちが下書きだったとしたら。
本当の詩はこの手帳の中にあります。
手帳を開くとそこには、ほとんど手紙と変わらない内容と、最後の数ページだけ初めて見る詩が書かれていました。
「雨上がりの晴れを書いた詩」「冬に眠り、夏を待つ詩」「自らを負け犬と標榜する詩」。
そして最後の1ページ。8/31の日付とともに掠れたインクで書かれた詩がありました。
題名は「エルマ」。彼がくれた大切な名前。
その瞬間、エルマの頭にはエイミーとの思い出があふれて止まらなくなります。
これまでの旅でエルマは、日記帳にたくさんの空白のページを作って記録をつけていました。それは、余白という無駄を病的に愛したエイミーを真似てのことでした。
その余白を彼との思い出で埋めていきます。どうして思いつかなかったんだろう、と不思議なくらい書くことは止まりません。
雨宿りをしようと入ったあのカフェで彼と初めて出会ったこと。
よく2人で人気のないあの施設の広間にピアノを弾きに行ったこと。
エイミーがいなくなったときのこと。
宿に帰ってからも自分の頭の中に溢れる思い出をひたすら書き連ねていきます。
「君の指先には神様が住んでいる」とエイミーは言っていました。
「君の価値を君は知らない。芸術の神様だけが本当の君を見てる。エルマ、君のしたいことは何だ?君が本当に見つけたいことは。」
エイミー、私はーーーー
日記帳に書く手が震えます。
もうエイミーの後を追っていたエルマはどこにもいませんでした。
自分で自分の人生を歩き始めたのです。
詩を書きました。題名は「雨とカプチーノ」。
彼と初めて出会ったときの詩です。
詩を書きました。題名は「憂一乗」。
エイミーを追って旅をしたときのエルマ自身のこと。
詩を書きました。題名は「心に穴が空いた」。
エイミーがいなくなったあとの自分のこと。
言葉は止まりませんでした。頭の中は音符が踊っていました。
ノーチラス
数日後、エルマはもう一度彼の鞄を見つけたあの桟橋に行きました。
その近くにもう一つ似たような桟橋があり、そこにエイミーのギターケースがありました。
ケースの中にはアコースティックギターと、一つの詩。
題名は「ノーチラス 」。
エルマは決心をします。
エイミーの残した詩で音楽を書く。
彼の思想を引き継いで、彼の物語を描く。
彼がエルマ自身の中に見た月明かりを、エルマ自身が探す、永い永い旅に出るのだと。
考察とか感想とか
実際はこの数倍のボリュームはある物語を削りに削ったあらすじを上に書いていきました。(まだの人、ほんとに初回限定版を買ってください…)
これで二つのアルバムに渡ったエルマとエイミーの物語は完結のようです。
物語上の2人の思想や心情がアルバムのどの曲にもちゃんとリンクしていてほんとにすごいの一言です。
いくつか気になったとこがあると思います。
エルマという名前
「彼がくれた、私の名前だ」とあります。
これは答えはない謎だと思います。
一応そのときのことが日記帳には記してありますが、どういう経緯かは曖昧なままです。
僕自身はエルマの両親の描写があまりないこと(祖母はよく出てくるけど)、エイミーが出会った当時のエルマが「他人の悪意に負けない自分が欲しい」と思っていたことなどから勝手にストーリーを想像していますが、ここはそれぞれの想像力に任せられている部分かと。
日記帳の×印について
ところどころページの上部に×印がついていますが、これは彼に倣ってエルマがつけた(あるいはスペアの日記帳に初めから書かれていた)余白のページだと思われます。
エイミーは日々の生活から無駄を愛し、楽しんでいました。そういった性格をエルマが模倣した、もしくはその名残が日記帳に現れているのでしょう。
つまり×印のページの文章はエルマが桟橋で彼の鞄を発見して以降にあとから書かれたものです。
「雨とカプチーノ」や「憂一乗」の歌詞も同様です。
しかし、×印以外にもおそらく飛ばされていて後から書き加えられたであろうページも結構存在するので(ノーチラスの歌詞など)、飛ばしていたページは割と適当なのかもしれません。
あらかじめいくつかのページには×をつけておいて飛ばして、それ以外も気分で飛ばすみたいなことをやっていたのかもしれません。
そうやってエイミーよろしく無駄を楽しんでいたのかも。
9/16 エイミー
筆跡が明らかに違います。
丁寧に丁寧に書いたのか、はたまた誰か別人が書いたのか…?
流石に前者かとは思いますが、そのページだけ明らかに字が違うので謎です。
いろんな解釈ができそうです。
また、この詩がいつ書かれたのかもよくわかりません。
歌詞に「四度目の夏が来る」「あの夏に君がいる」とあることから、もしかするとエルマが旅をした夏よりもさらに後に書かれたものの可能性すらあると思います。
そうすると筆跡が投げやりな感じから丁寧な感じに変わっているのもなんとなく頷けますし。
なぜ「僕は音楽を辞めた」のか
これはアルバム「だから僕は音楽を辞めた」の方でなんとなくの答えは出ていたように思いますが、結局、ヘンリー・ダーガーのような創作への向き合い方ができない自分へ失望してしまったからでしょう。
死後、初めて小説原稿が発見され有名となったヘンリー・ダーガーの話からは、創作家は評価、名声、金、権力といったものに無欲であるべきだと考えるエイミーの哲学(そしてn-bunaさん自身の哲学)が伺えます。
いつからか、ただ人から認められたいという理由で創作をしている自分自身の生き方の報われなさに絶望してエイミーはいつしかピアノを弾くことを辞めました。
花緑青
花緑青について。
花緑青は毒性の人工染料です。
エイミーの便箋にはこれを涙に例えた詩である「五月は花緑青の窓辺から」という曲がありました。
ノーチラスのMVでは、エイミーが瓶に入った液体を飲み干すような描写がありますが、これは色的には完全に花緑青ですね。
花緑青の瓶を持ち歩いていて最後に飲むことに決めていたのかもしれません。
エイミーはもともと病気だったと思われます。
彼が病院に入っていく姿をエルマが目撃したという記述が日記帳にはあります。
それを含めての「人生の賞味期限」の話であったり、「人生の終わり方」を考えて夏までを生き抜くと決めたエイミーの旅であったりするわけです。
ノーチラスのMVで花緑青を涙を流しながら飲むエイミー、心を揺さぶられます…。
夜紛い
夕焼けの修飾語として使われています。
エイミーが自分の創作の原動力である「怒り」をいつしか失ってしまっていることに気づいたときに見た忘れられない空であり、決意をしたエルマが帰路の船の上で見た空の色でもあります。
イメージはノーチラスのMVの最初に出てくるような空だと思います。
ちなみにノーチラスのMVには、エイミーが怒りを失ってしまっている様子を示唆するシーンも出てきます。あのMVはほんとにすごい。
エイミーの手帳に残された清書、そしてヨルシカについて
エイミーが自分の手帳に残した清書について。
「自らを負け犬と標榜する詩」で流石にピンときたと思いますが、これはヨルシカの楽曲「負け犬にアンコールはいらない」のことです。(他二つは「ただ君に晴れ」と「冬眠」?)
彼の残した詩で歌を作ること、彼の物語を歌っていくことを決心したのはエルマです。
つまり、エルマこそがヨルシカなのだと解釈することでヨルシカというアーティスト自体に綺麗に筋が通ります。
「藍二乗」や「ノーチラス」がヨルシカ結成初期の頃にはすでにできていた曲である1ことから考えても、ヨルシカというアーティストの裏には初めから今回の物語が隠れていたことになります。
これまでの楽曲をMVとともに思い出してみましょう。
準透明少年では桟橋の前に立つ青年の姿や海底に沈んでいく様子が描かれています。
雲と幽霊では、顔のない幽霊が彷徨っている場所に「Stockholm」や「Gamla Stan」の文字が写っています。
全てこの物語の伏線とも考えることができます。
だから、あえてこう言いましょう。
今回の二つのフルアルバム「だから僕は音楽を辞めた」と「エルマ」。
ここからヨルシカは始まった、と。
もちろん、一つ一つの楽曲単体で聴いても素晴らしいものですし、そういう楽しみ方もとても良いことだと思います。
それにさらにプラスとして、今回の二つのコンセプトアルバムを知っていると、より楽曲が味わい深いものに聴こえるかもしれないよ、ということです。
ヨルシカの歌には「あの夏」という言葉がよく出てきます。
エイミーとお別れした「あの夏」を、エルマが、歌い続けているのかもしれない、なんて思うとまた少し曲の聴こえ方が変わってくるようですね。
最後に
n-bunaさんという天才が、suisさんというボーカリストに出会ってくれたからこそ生まれた奇跡の作品だと思っています。
n-bunaさんというコンポーザーが天才なのはもう言うまでもない事ですが、suisさんが曲に入り込んで歌うような人でなければここまで好きな作品にはならなかったと気がします。
n-bunaさん自身、suisさんの存在が作品作りに影響したと言っています。2
かなり内容をまとめて書いた記事なので、このブログだけを読んだ人には良さが伝わりきってないであろうことがとっても無念です。
だから皆さん、ぜひ二つのアルバムを初回限定版で買ってこの世界観を味わってください。
また、エルマ特設サイトのインタビューも一つ一つの曲について詳しく語られているので読むのおすすめです。
- アーティスト: ヨルシカ
- 出版社/メーカー: U&R records
- 発売日: 2019/04/10
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
- アーティスト: ヨルシカ
- 出版社/メーカー: Universal Music =music=
- 発売日: 2019/08/28
- メディア: CD
- この商品を含むブログを見る
最後まで長々とお付き合いいただきありがとうございました。
AtCoder ABC140
概要
AtCoderの記録です。全部Pythonで頑張ります。
E,Fは解いてないです。
この記事の対象
本編
AtCoderとは
競技プログラミングコンテストを開催している会社です。 atcoder.jp
ABC140
院試が終わったので久しぶりの参加です。
A Password
N = int(input()) print(N**3)
B Buffet
Bにしては少しややこしい問題でした。
N = int(input()) A = list(map(int,input().split())) B = list(map(int,input().split())) C = list(map(int,input().split())) befo = -100 sat = 0 for i in range(N): index = A[i] - 1 sat += B[index] if befo + 1 == index: sat += C[befo] befo = index print(sat)
C Maximal Value
合計が最大となるようにAを定めると、となります。
N = int(input()) B = list(map(int,input().split())) A = [] for i in range(N): if i == 0: A.append(B[i]) elif i == N-1: A.append(B[i-1]) else: A.append(min(B[i-1],B[i])) print(sum(A))
D Face Produces Unhappiness
人の顔を見られないコミュ障の話(?)。
Lを←、Rを→としたとき、「…←|→…→|←…」のように仕切りを入れて反転させる部分を選ぶと、幸せな人が2人増えます。(←→、→←の順番はどちらでもいいです。)
「…←|→…→|←」「←|→…→|←…」のように一方が端っこにある場合は、幸せな人が1人増えます。
←→、→←の組はより内側から選んでいくことで他の←→、→←に干渉しません。
N,K = map(int,input().split()) S = input() p1 = p2 = cnt = 0 for i in range(N-1): if S[i] == 'L' and S[i+1] == 'R': p1 += 1 if S[i] == 'R' and S[i+1] == 'L': p2 += 1 if S[i] == 'R' and S[i+1] == 'R': cnt += 1 if S[i] == 'L' and S[i+1] == 'L': cnt += 1 a1 = min(p1,p2,K) ans = a1*2 + cnt if K > a1: a2 = min(max(p1,p2)-a1,K-a1) ans += a2 print(ans)
まとめ
院試も無事合格できて、いよいよこちらも頑張っていきたいですね! 水色くらいには載せたいなー。
TMI受験について
概要
東京大学工学系研究科技術経営戦略学専攻の受験体験記です。
この記事の対象
- TMIの入試の情報を得たい人
本編
こんにちはalumiです。
東京大学工学部システム創成学科E&Eコースの4年生です。
情報理工の入試の併願でTMIも出していたのでそれについても情報共有目的で記事を残していきます。
情報理工の勉強に全てを費やしていたので対策については多く語れないですが、実際に試験を受けての感想なので少しでも参考になればと思います。
試験について
試験科目はTOEFL ITP (or TOEFL iBT)、論理的思考力を見るための数理的問題(数学)、小論文の3つと面接です。
筆記で半分程度に絞られてそれを突破した人が面接に進み、その後面接点も加えた総合得点で合否が決まります。面接でも半分落ちます。
数学は工学系共通数学の問題を6問中2問、シス創系オリジナルの論理的思考力を見るための数理的問題を6問中4問を計解きます。
配点は150,200,150,200です。面接配点でかい…。
それぞれについての感想
英語
情報理工の方の記事でも書いたので割愛します。550/677くらいあれば後れをとることはないと思います。
本番は可もなく不可もなくといった出来。
数学
数学の出来が合否結果の分かれ目だと思います。
150分で6問解きますが、単純に25分ずつとは考えない方がいいです。
配点は工学系共通問題2問は50点ずつ、シス創のオリジナル問題4問は25点ずつで異なりますし、難易度も後者の方が簡単です。
工学系共通の問題は「微分方程式」「線形代数」「複素関数」「フーリエ・ラプラス変換」などの分野から6問出題されます。
自分は微分方程式と線形代数あたりを解こうかな〜と思って過去問で対策していました。
シス創オリジナル問題はIQテストのようなものや大学受験のような問題が出ます。割と簡単です。
逆に言えば少なくとも9割程度は取りたい問題です。工学部共通に時間を使いすぎて解ききれない、といった事故を起こさないよう本番は気をつけましょう。
本番は微分方程式と線形代数の2問を選択しました。思ったより難しく、6割程度しか解けていないのに残り60分となってしまったので仕方なくシス創の問題に移りました。
シス創の問題は1,2,5,6を選びました。1は大学受験でありそうな最大最小の問題、2はユークリッドの互除法で連分数展開するだけの問題、5はどこかで見たようなじゃんけんの問題、6は誘導が超丁寧な単位円上の有理点の問題でした。
過去問通り、そこまで難しい問題はなくほぼ完答できたと思います。
小論文
小論文は対策が難しかったです。
200字ともなると書きなれていないとしんどいので、過去問で練習しておいた方がいいです。
よっぽど変なことを書かなければあまり差がつかない問題だと思います。
本番は全体的に100字以下の問題数が多かったり、明らかに書くべき点が整理されていたり、自分の意見を書くだけの問題が2問あったりと、難易度は低かったと思います。
面接
工学部3号館の一室で行われました。噂では教授陣10人がそれぞれ20点ずつ持ち合計点が得点になるとか。
聞かれた内容としては
- 受験番号、氏名、所属
- TMIを志望した理由
- 入ったらやりたい研究内容
- なぜその研究をやりたいのか
- 卒業後の進路設計
- 今やっている研究
- 今の研究室名(僕がシス創だからでしょう)
などです。
特に圧迫された感じはしなかったです。むしろ淡々と進んでいく感じでした。
総括
合格をいただくことができました。(情報理工で希望研究室に合格できたのでTMIは辞退させていただくつもりです)
シス創のオリジナル問題を慌てずに全完できたこと、小論文が簡単だったこと、面接まで進んでしまえば広義内部生なのでそこまで緊張せずにすんだことなど、色々運がよかったのかもしれません。
情報の薄い記事だったとは思いますが、何かの参考になれば幸いです。
追記
開示が帰ってきたので点数だけ載せときます。
全教科ほぼ同じ得点率で全体で6割7分という結果でした。けっこうギリギリで合格したんじゃないかなと思ってます。
TOEFLは553/677なのに、換算得点で得点率が変わっていて謎。
数学もシス創オリジナル問題が満点だったら流石にこんな得点にはならないと思うので、どこかミスっていたんでしょうね。
シス創から情報理工の院を受けた話
概要
東京大学情報理工学系研究科システム情報学専攻の合格体験記です。
この記事の対象
- システム情報学専攻入試の情報を得たい人
本編
簡単な自己紹介
所属
東京大学工学部システム創成学科E&Eコースの4年生です。 本当はシスB志望だったのですが、進振り点が足りずAコースに進学しました。
システム情報学専攻を受けようと思った理由
学部生時代に金融の研究がしたいと思い、izm教授の研究室に入るべく、システム創成学専攻か技術経営戦略学専攻へ進学しようと思っていたのですが、いざ出願するときに院での授業科目を調べてみたところ、どうも個人的にはピンとくるものが少なめでした。(シス創の授業はシステム空間やシステム思考などファジーな概念の授業が多く、それの延長にすぎないように感じました。)
そこで他にやりたいことはないのかと自分でよくよく考えたときに、それまでは趣味でしかなかった音に関する技術について研究したいと思ったことがきっかけです。
また、3月ごろにビッグサイトで行われたコンテンツ東京という展覧会で、SONYのsonic surf VRという新製品を体験して、音場再現技術、いわゆる音のVRというものに強く興味を持ったことも志望動機になりました。
勉強について
すでに知っている人も多いと思いますが、試験科目は英語(TOEFL ITP or TOEFL iBT)、共通数学、専門、口述試験です。噂では、英語<<共通数学<専門の配点と参考程度の面接点と言われています。
それぞれについて書いていきます。
英語
自分が受験を決意したときにはもうiBTを受けてスコア提出する時間はなかったので、TOEFL ITPを受けました。
実際、ほとんどの受験者はITPを受けていたと思います。 理由はiBTと違ってリスニングとリーディングのみでとっつきやすいかららしいですね。納得です。
英語に関しては、大学受験のときの単語帳を復習しつつ本番形式の模試4回分をやりました。あまり参考にはならないと思うので詳細は割愛します。
配点もそんなに高くないので550くらい取れれば大丈夫だと思います。逆に500切るくらいだとまずいかも(?)。
自分は下の教材をやってだいたい530~550くらいでした。リスニングは最後まで全然できるようになりませんでした。
CD-ROM付 完全攻略! TOEFL ITP(R)テスト 模試4回分
- 作者: ポール・ワーデン,ロバート・ヒルキ,藤井哲郎
- 出版社/メーカー: アルク
- 発売日: 2015/03/11
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
共通数学
「線形代数」「解析」「確率・統計」から1題ずつ、計3題を150分で解きます。
過去問が公式サイトで公開されていますが、解答などは特にありません。 しかし、これに関しては(初めからだいたい解ける人を除いて)解答がなければ勉強になりませんので、なんとかして解答を手に入れることをお勧めします。自分は幸い、計数工学科に教養時代の友達がいたので、内部生が作成した解答pdfを共有してもらっていました。(某氏には本当にお世話になりました…)
教養時代には曖昧な理解で乗り切ってしまっていた線形代数や微分方程式などを6月ごろから全力で復習しました。
線形代数は教養時代に使っていた教科書を、微分方程式と複素関数はマセマの参考書(短時間で試験用に仕上げたい人にはおすすめです)をやりました。
スバラシク実力がつくと評判の常微分方程式キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
- 作者: 馬場敬之
- 出版社/メーカー: マセマ
- 発売日: 2018/10/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
スバラシク実力がつくと評判の複素関数キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
- 作者: 馬場敬之
- 出版社/メーカー: マセマ
- 発売日: 2019/03/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
フーリエ・ラプラス変換は専門でもバリバリ使うのでしっかり勉強し直しました。下の本を使いましたが、フーリエ変換をを係数につける流派だったので(数学分野ではこっちの定義、工学分野では逆変換にをつける定義が主流なイメージ)、かえって混乱してしまったかもしれません。
- 作者: 石村園子
- 出版社/メーカー: 共立出版
- 発売日: 2010/11/30
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 5回
- この商品を含むブログを見る
変分法とかベクトル解析は出たら誘導に乗って頑張るつもりで過去問のみやりました。
確率・統計はすでにあった知識を補完する形で過去問を解いていきました。大学受験の知識で解けるような問題もありますが、確率密度関数や積率母関数を扱う問題は慣れておくべきです。
そんなこんなで一通り復習した後は過去問をひたすら解いていき、2008〜2015、2018を解きました。(全部解けてないのは時間的な問題です)
専門
他の専攻の専門科目を選んで受けてもいいのですが、今年からシステム情報学専攻は専門科目の選択問題数が3問から2問に減ったので、自分のように学部で専門の勉強をしていなくて一から学ばないといけない人にとっては千載一遇のチャンスだと思い、普通にシステム情報の問題で受けました。
選択問題は「信号処理」「回路」「制御」「コンピュータ」「力学」の5分野から1問ずつ出題されます。自分は信号処理と制御に絞って余裕があれば回路を解こうと思って勉強をしていきました。 理由は、自分のやりたい研究が音に関する研究だったので、信号処理は早くからやっておきたいと考えたのと、シス創の授業でさらっとですが制御の勉強をしていたからです。
ここからはその二つについて書いていきます。他の問題については何も書けません。すみません。
まず信号処理について。 信号処理は正直学ぶべきことが多くて大変です。決め打ちで勉強する選択問題としてあまりオススメはしません。
計数工学科には信号処理第一と信号処理第二という二つの授業があって、前者はフーリエ変換やディジタルフィルタについて、後者は不規則信号の自己相関関数や推定フィルタについて学ぶようです。
過去問を見てみると、どうやら(完全に個人の憶測ですが)この第一の範囲と第二の範囲が年ごとに交互に出ているようでした。
第二の範囲は個人的には難しい問題が多く、満足に解くことは難しそうでしたが、幸い自分の受ける年は第一の年だったので、そちらを重点的に勉強しました。
勉強の手順としてはまず「やる夫で学ぶ信号処理」を一通り理解しました。
やる夫は語尾さえ気にならなければとてもいい教材だと思います。僕もこれのおかげで4種類のフーリエ変換の関係や櫛形関数との関連、z変換、ラプラス変換などについて理解が深まりとても助かりました。
この時点で、まだ過去問は特には難しかったので、下の問題集をやりました。
- 作者: 太田正哉
- 出版社/メーカー: コロナ社
- 発売日: 2013/10/01
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
これでz変換や離散フーリエ変換などの計算問題に慣れることができました。
その後は過去問を解いて参考書で復習するということを繰り返しました。
信号処理第2の範囲はやる夫や上の問題集では学べないので、下の本を読みました。
- 作者: 原島博
- 出版社/メーカー: コロナ社
- 発売日: 2018/11/07
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
第2の範囲は時間的に問題演習まで十分にやれなかったので、万が一そっちの問題が出たら、ということを考えると最後まで怖かったです。
過去問をやってみるとわかりますが、櫛形関数のフーリエ変換などはよく使うので一度やっておくべきだと思います。
次に制御について。
制御については他のブログでもオススメされている下の参考書がオススメです。
- 作者: 森泰親
- 出版社/メーカー: 森北出版
- 発売日: 2014/10/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 森泰親
- 出版社/メーカー: 森北出版
- 発売日: 2014/10/04
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログ (1件) を見る
これをやって過去問を解くだけである程度の点数が望めると思います。
詳細な説明が省略されているところもあるので、初学者は必要に応じて別の参考書やサイトを参照ながら勉強を進めるのがおすすめです。
本番について
英語
リスニングがやはりあまりできませんでした。文法と長文は割とできました。
結局問題冊子に記入をしていいのかよくわかりませんでした。
共通数学
予想得点は5割くらい。全然解けなかったです。
第1問は行列の指数関数の問題でした。
対称行列の対角化というありがちな問題から始まって、マクローリン展開を利用して実際にexp(A)の値を求める問題などでした。 マクローリン展開は手薄になっていた分野だったので少し焦りましたが、この問題は最後までちゃんと解ききれたと思います。
第2問は二次元平面上で動く点や凸領域に関する問題でした。
「示せ」系の問題が多かったので言われた通りに頑張って解いていきましたが、(3)あたりから苦しくなってきて、定性的な説明になってしまいました。 後から接戦ベクトルをで表せばよかったと気づきました。
第3問は確率漸化式の問題でした。
しっかり50分残して臨んだのですが、(1)以外ほぼ解けませんでした。確率の問題があんなに解けないのは想定外だったので試験中泣きそうになりました。 強い人曰く(3)から解いた方が解きやすかったらしいです。 あと、面接をテーマにしてるのは普通に面白いと思いました。
こんな感じで、感触的には大問順に9割、5割、1割ぐらいだと思います。全体で5割。自分では6割が合格ラインのつもりでいたので(実際平均が6割くらいという噂もある)数学の試験終了時は魂抜けてました。
専門
昼休みに同クラの友達と偶然出会って確率が難しかったことを知り、少し気持ちが楽になったおかげで、切り替えて専門に臨めました。
信号処理と制御を選択することは事前に決めておいたので、迷わず解きました。
信号処理の問題はz変換がテーマでした。けっこう当たり年だったと思います。最後の問題で少しミスってしまいましたがほぼ完答できました。
制御の問題は古典制御からの出題でした。
近年は現代制御の問題が多くなってきていたので、最適レギュレータとか勉強していたんですけど杞憂に終わりました。
試験中に、フルビッツ多項式ってなんだっけ…?となってしまって、信号処理の見直しに時間を回したので(3)の前半までしか解けていないですが、そこまでは完答できたと思います。
終わった後の感想は、選択問題が2問に減ったことで平均点がどう変化するか読めないのが不安だけど、自分なりにはやることはやれたかな、という感じでした。
予想得点は(計算ミスが全くないとすれば)信号処理9割、制御6割です。
口述試験
シス創からの外部受験だったので、志望理由を聞かれるかな、と思い論理的に説明できるよう考えていきました。あとは用語の意味を軽く確認しました。
実際に聞かれたことは
- 併願の有無
- 研究室の志望順の確認
などの事務的なものから始まり、その後自分の第一志望研究室の教授から
の二つについて聞かれました。緊張して冗長な説明をしてしまいメンタルをやられました。
結果
自分の志望研究室がかなり人気だという話を聞いていて、自分のテストの出来も(数学が特に)微妙だったので、半分諦めていたのですが、なんと第1志望研究室に合格をいただくことができました。めちゃくちゃ嬉しかったです。
計数工学科の内部生を贔屓するという都市伝説を聞いたこともありましたが、自分のように外部から第一志望研究室へ入ることができた人がいる一方で落ちてしまった内部の方の話も聞くので、そんなことは無いようです。良かった。
院入学までに専門の残り科目や、院から研究予定の分野の勉強を卒論と同時に進めていきたいと思っています。
最後に、もしこの記事が未来の外部受験生の方の参考になれば幸いです。
追記
開示が返ってきたので載せておきます。
感想は
- 共通数学が解いた問題全部正解くらいの勢いで意外にも点がきている
- 逆に専門は思ったより減点されてる(150/200くらいあるつもりだった)
- 面接は教授怖かったしメンタル死んでたけど、怒ってたり呆れてたりしたわけではないらしい。
ですね。何れにせよこの出来では第一志望研究室に入れたのはかなりギリギリだったと思いますし、運が良かったことを噛み締めてこれからも勉強に励みたいと思います。
AtCoder ABC137で死んだ話
概要
AtCoderの記録かと思いきやただの愚痴と懺悔。
この記事の対象
- 哀れんでくれる人
本編
ABC137
院試勉強で生活リズムが狂ってめっちゃ疲れてたのになぜか参戦してしまった。
結果D解けなくてレートも下がってかなり後悔中。
解けた問題も解説書く気起きないので、ただの愚痴記事にしときます。
昨日徹夜してたせいでめっちゃ眠くて18時ごろからコンテスト開始1分前まで睡眠してた。
いいパフォーマンス取れる自信なかったので、Dが解けそうなら参加しようってことで、Dから解くことにした(これがすべての間違いだった)。
結果、TLE見え見えのオーダーのアルゴリズムを調子乗って提出して、まんまと参加してしまった。
DのTLE抜けが沼にはまりそうだったのでとりあえずCまでを提出しておくことに。
ところが今回、Cが文字列操作系の少し苦手な部類の問題だったので、手こずってしまって提出し終わったときには残り時間20分とかだった。
その時点で順位も2600位とか。このままだと確実にレート下がるから絶対にDを解き切らないとと張り切ったけど無理だった〜〜〜〜。
今回1000点ならタイム遅くても1100位くらいまで上がれてたので、Dがやっぱ難しかったんでしょうね。
院試勉強も専門の問題演習が全然足りてないのに、共通数学すら安定しなくて(自分が希望する研究室的には2完1半くらい欲しいのに平均して1完2半くらい)もう色々辛いですね…。
あと9日しかないのにABC参加してレート下げて何をやってるんだろう…。気持ち切り替えて頑張ろう。
とりあえず院試終わるまでABCは参加やめときます。
まとめ
悲しみの舞。