セイレンチュウ..

シス創から情報理工の院を受けた話

概要

東京大学情報理工学系研究科システム情報学専攻の合格体験記です。 f:id:alumi-tan:20190907225542p:plain

この記事の対象

  • システム情報学専攻入試の情報を得たい人

本編

簡単な自己紹介

所属

東京大学工学部システム創成学科E&Eコースの4年生です。 本当はシスB志望だったのですが、進振り点が足りずAコースに進学しました。

システム情報学専攻を受けようと思った理由

学部生時代に金融の研究がしたいと思い、izm教授の研究室に入るべく、システム創成学専攻か技術経営戦略学専攻へ進学しようと思っていたのですが、いざ出願するときに院での授業科目を調べてみたところ、どうも個人的にはピンとくるものが少なめでした。(シス創の授業はシステム空間やシステム思考などファジーな概念の授業が多く、それの延長にすぎないように感じました。)

そこで他にやりたいことはないのかと自分でよくよく考えたときに、それまでは趣味でしかなかった音に関する技術について研究したいと思ったことがきっかけです。

また、3月ごろにビッグサイトで行われたコンテンツ東京という展覧会で、SONYのsonic surf VRという新製品を体験して、音場再現技術、いわゆる音のVRというものに強く興味を持ったことも志望動機になりました。

勉強について

すでに知っている人も多いと思いますが、試験科目は英語(TOEFL ITP or TOEFL iBT)、共通数学、専門、口述試験です。噂では、英語<<共通数学<専門の配点と参考程度の面接点と言われています。
それぞれについて書いていきます。

英語

自分が受験を決意したときにはもうiBTを受けてスコア提出する時間はなかったので、TOEFL ITPを受けました。
実際、ほとんどの受験者はITPを受けていたと思います。 理由はiBTと違ってリスニングとリーディングのみでとっつきやすいかららしいですね。納得です。
英語に関しては、大学受験のときの単語帳を復習しつつ本番形式の模試4回分をやりました。あまり参考にはならないと思うので詳細は割愛します。
配点もそんなに高くないので550くらい取れれば大丈夫だと思います。逆に500切るくらいだとまずいかも(?)。
自分は下の教材をやってだいたい530~550くらいでした。リスニングは最後まで全然できるようになりませんでした。

CD-ROM付 完全攻略!  TOEFL ITP(R)テスト 模試4回分

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共通数学

線形代数」「解析」「確率・統計」から1題ずつ、計3題を150分で解きます。
過去問が公式サイトで公開されていますが、解答などは特にありません。 しかし、これに関しては(初めからだいたい解ける人を除いて)解答がなければ勉強になりませんので、なんとかして解答を手に入れることをお勧めします。自分は幸い、計数工学科に教養時代の友達がいたので、内部生が作成した解答pdfを共有してもらっていました。(某氏には本当にお世話になりました…)
教養時代には曖昧な理解で乗り切ってしまっていた線形代数微分方程式などを6月ごろから全力で復習しました。

線形代数は教養時代に使っていた教科書を、微分方程式複素関数はマセマの参考書(短時間で試験用に仕上げたい人にはおすすめです)をやりました。

フーリエラプラス変換は専門でもバリバリ使うのでしっかり勉強し直しました。下の本を使いましたが、フーリエ変換\dfrac{1}{\sqrt{2\pi}}を係数につける流派だったので(数学分野ではこっちの定義、工学分野では逆変換に\dfrac{1}{2\pi}をつける定義が主流なイメージ)、かえって混乱してしまったかもしれません。

やさしく学べる ラプラス変換・フーリエ解析 増補版

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変分法とかベクトル解析は出たら誘導に乗って頑張るつもりで過去問のみやりました。

確率・統計はすでにあった知識を補完する形で過去問を解いていきました。大学受験の知識で解けるような問題もありますが、確率密度関数積率母関数を扱う問題は慣れておくべきです。

そんなこんなで一通り復習した後は過去問をひたすら解いていき、2008〜2015、2018を解きました。(全部解けてないのは時間的な問題です)

専門

他の専攻の専門科目を選んで受けてもいいのですが、今年からシステム情報学専攻は専門科目の選択問題数が3問から2問に減ったので、自分のように学部で専門の勉強をしていなくて一から学ばないといけない人にとっては千載一遇のチャンスだと思い、普通にシステム情報の問題で受けました。

選択問題は「信号処理」「回路」「制御」「コンピュータ」「力学」の5分野から1問ずつ出題されます。自分は信号処理と制御に絞って余裕があれば回路を解こうと思って勉強をしていきました。 理由は、自分のやりたい研究が音に関する研究だったので、信号処理は早くからやっておきたいと考えたのと、シス創の授業でさらっとですが制御の勉強をしていたからです。
ここからはその二つについて書いていきます。他の問題については何も書けません。すみません。

まず信号処理について。 信号処理は正直学ぶべきことが多くて大変です。決め打ちで勉強する選択問題としてあまりオススメはしません。
計数工学科には信号処理第一と信号処理第二という二つの授業があって、前者はフーリエ変換やディジタルフィルタについて、後者は不規則信号の自己相関関数や推定フィルタについて学ぶようです。
過去問を見てみると、どうやら(完全に個人の憶測ですが)この第一の範囲と第二の範囲が年ごとに交互に出ているようでした。
第二の範囲は個人的には難しい問題が多く、満足に解くことは難しそうでしたが、幸い自分の受ける年は第一の年だったので、そちらを重点的に勉強しました。

勉強の手順としてはまず「やる夫で学ぶ信号処理」を一通り理解しました。
やる夫は語尾さえ気にならなければとてもいい教材だと思います。僕もこれのおかげで4種類のフーリエ変換の関係や櫛形関数との関連、z変換ラプラス変換などについて理解が深まりとても助かりました。

この時点で、まだ過去問は特には難しかったので、下の問題集をやりました。

例解 ディジタル信号処理入門

例解 ディジタル信号処理入門

これでz変換や離散フーリエ変換などの計算問題に慣れることができました。

その後は過去問を解いて参考書で復習するということを繰り返しました。
信号処理第2の範囲はやる夫や上の問題集では学べないので、下の本を読みました。

第2の範囲は時間的に問題演習まで十分にやれなかったので、万が一そっちの問題が出たら、ということを考えると最後まで怖かったです。

過去問をやってみるとわかりますが、櫛形関数のフーリエ変換などはよく使うので一度やっておくべきだと思います。

次に制御について。
制御については他のブログでもオススメされている下の参考書がオススメです。

演習で学ぶ基礎制御工学

演習で学ぶ基礎制御工学

演習で学ぶ現代制御理論

演習で学ぶ現代制御理論

これをやって過去問を解くだけである程度の点数が望めると思います。
詳細な説明が省略されているところもあるので、初学者は必要に応じて別の参考書やサイトを参照ながら勉強を進めるのがおすすめです。

本番について

英語

リスニングがやはりあまりできませんでした。文法と長文は割とできました。
結局問題冊子に記入をしていいのかよくわかりませんでした。

共通数学

予想得点は5割くらい。全然解けなかったです。

第1問は行列の指数関数の問題でした。
対称行列の対角化というありがちな問題から始まって、マクローリン展開を利用して実際にexp(A)の値を求める問題などでした。 マクローリン展開は手薄になっていた分野だったので少し焦りましたが、この問題は最後までちゃんと解ききれたと思います。

第2問は二次元平面上で動く点や凸領域に関する問題でした。
「示せ」系の問題が多かったので言われた通りに頑張って解いていきましたが、(3)あたりから苦しくなってきて、定性的な説明になってしまいました。 後から接戦ベクトルを(\cos x,\sin x)で表せばよかったと気づきました。

第3問は確率漸化式の問題でした。
しっかり50分残して臨んだのですが、(1)以外ほぼ解けませんでした。確率の問題があんなに解けないのは想定外だったので試験中泣きそうになりました。 強い人曰く(3)から解いた方が解きやすかったらしいです。 あと、面接をテーマにしてるのは普通に面白いと思いました。

こんな感じで、感触的には大問順に9割、5割、1割ぐらいだと思います。全体で5割。自分では6割が合格ラインのつもりでいたので(実際平均が6割くらいという噂もある)数学の試験終了時は魂抜けてました。

専門

昼休みに同クラの友達と偶然出会って確率が難しかったことを知り、少し気持ちが楽になったおかげで、切り替えて専門に臨めました。

信号処理と制御を選択することは事前に決めておいたので、迷わず解きました。

信号処理の問題はz変換がテーマでした。けっこう当たり年だったと思います。最後の問題で少しミスってしまいましたがほぼ完答できました。

制御の問題は古典制御からの出題でした。
近年は現代制御の問題が多くなってきていたので、最適レギュレータとか勉強していたんですけど杞憂に終わりました。
試験中に、フルビッツ多項式ってなんだっけ…?となってしまって、信号処理の見直しに時間を回したので(3)の前半までしか解けていないですが、そこまでは完答できたと思います。

終わった後の感想は、選択問題が2問に減ったことで平均点がどう変化するか読めないのが不安だけど、自分なりにはやることはやれたかな、という感じでした。
予想得点は(計算ミスが全くないとすれば)信号処理9割、制御6割です。

口述試験

シス創からの外部受験だったので、志望理由を聞かれるかな、と思い論理的に説明できるよう考えていきました。あとは用語の意味を軽く確認しました。

実際に聞かれたことは

  • 併願の有無
  • 研究室の志望順の確認

などの事務的なものから始まり、その後自分の第一志望研究室の教授から

の二つについて聞かれました。緊張して冗長な説明をしてしまいメンタルをやられました。

結果

自分の志望研究室がかなり人気だという話を聞いていて、自分のテストの出来も(数学が特に)微妙だったので、半分諦めていたのですが、なんと第1志望研究室に合格をいただくことができました。めちゃくちゃ嬉しかったです。

計数工学科の内部生を贔屓するという都市伝説を聞いたこともありましたが、自分のように外部から第一志望研究室へ入ることができた人がいる一方で落ちてしまった内部の方の話も聞くので、そんなことは無いようです。良かった。

院入学までに専門の残り科目や、院から研究予定の分野の勉強を卒論と同時に進めていきたいと思っています。

最後に、もしこの記事が未来の外部受験生の方の参考になれば幸いです。

追記

開示が返ってきたので載せておきます。
f:id:alumi-tan:20191011134718j:plain 感想は

  • 共通数学が解いた問題全部正解くらいの勢いで意外にも点がきている
  • 逆に専門は思ったより減点されてる(150/200くらいあるつもりだった)
  • 面接は教授怖かったしメンタル死んでたけど、怒ってたり呆れてたりしたわけではないらしい。

ですね。何れにせよこの出来では第一志望研究室に入れたのはかなりギリギリだったと思いますし、運が良かったことを噛み締めてこれからも勉強に励みたいと思います。